「国家公務員、ベア2年連続見送り」について

8月8日、人事院は、今年度の国家公務員の一般職給与について、国会と内閣に勧告しました。(人事院勧告)
給与勧告のポイントとしては、
(1)基本給の改定を2年連続で見送る。
(2)期末・勤勉手当てを0.05ヶ月分引き下げ年間4.7ヶ月分とする。
(3)官民給与の格差相当額3,756円/年を一時金として来年3月に支給する。 
となっています。 
これにより、年間給与は3年連続減少となり、職員平均年収(行政職40.7歳)は約16,000円(0.2%)減の6,376,000円となります。
今回の勧告にあたり人事院は民間企業約7500社、約44万人の個人別給与を実地調査し、その結果、長引く景気低迷で民間企業の賃上げが抑制されたことが反映され、格差は313円/月(3,756円/年)にとどまったとしています。このため、基本給を定めた俸給表を改定する程の開きがないことから、この格差を暫定的に一時金として、3月に支給することにしています。この給与勧告の対象者は一般国家公務員が対象となりますが、国会職員、裁判所職員、自衛官などの特別国家公務員、地方公務員、特殊法人等職員、学校・病院職員等も、当該給与勧告に準じて改定されるので、多くの雇用者が影響を受けるものと考えられます。尚、改定は平成13年4月1日に遡及して実施されます。

人事院勧告とは?
国家公務員の本給や各種手当てを改定するため、人事院が毎年夏に内閣と国会に対して、公務員の給与改定の勧告として提出しています。民間企業の勤労者の場合は、団体交渉権や、争議権が憲法で保障された労働基本権として約束されており、自らの給与等の改善は直接経営者側と交渉できます。これに対して、国家公務員は団体交渉権や争議権の制約を受けており、自らの給与等の決定に関し交渉する場がないため、その代替措置として人事院の給与勧告が設けられているのです。
この勧告は民間給与との均衡を図る「民間準拠方式」に基づき、民間の給与実態を調査、分析、比較して行われます。この「民間準拠方式」を基本に勧告を行っている理由としては、「(1)国は民間企業と異なり市場原理による給与決定は困難であること、(2)公務員も勤労者であり、社会一般の情勢に適応した適性な給与の確保が必要であること、(3)公務員給与は国民の負担で賄われていることなどから、その時々の雇用情勢をも反映している民間企業従業員の給与に公務員給与を合わせていくこと、すなわち、「世間相場」により適切に決定するのが最も合理的であり、職員をはじめ広く国民の理解を得られる方法であると考えられること」としています。

  勧告後 年間給与の減少額
月額 年間
係員 25歳 独身 188,900 3,158,000 △  6,000
30歳 配偶者・子1 243,600 4,053,000 △  9,000
係長 35歳 配偶者・子2 327,700 5,523,000 △ 13,000
40歳 配偶者・子2 366,900 6,178,000 △ 16,000
地方機関課長 50歳 配偶者・子2 490,380 8,155,000 △ 21,000
本府省課長 45歳 配偶者・子2 685,020 11,821,000 △ 35,000
本府省局長 - - 1,148,000 19,576,000 △ 82,000
事務次官 - - 1,507,520 25,707,000 △ 107,000


社会福祉施設への影響・・・
この人事院勧告は社会福祉施設に大きな影響を与えます。例えば保育所の場合、国は認可保育所に対し、その運営費を「保育単価」として支弁しています。「保育単価」はその大部分を職員の人件費が占めており、その積算の根拠となるのが人事院勧告です。人事院勧告に示されている各職種別俸給表の中に「福祉職俸給表」があり、「保育単価」は、この「福祉職俸給表」を主な積算根拠として決定され、その効果は4月に遡及されます。従い、公務員給与の減少が、国から支弁される「保育単価」の縮減となり、保育所にとっての収入が、年度当初より減少することになります。