東京都の社会福祉法人に対する経営改善支援


 東京都は社会福祉法人を対象に経営コンサルタントを利用しての経営改善活動を実施しました。東京都によればこの活動は、従来の措置制度から利用者主体へと改革が行われている現状の中で、より良いサービスを供給し、社会福祉法人の経営を安定させるための方策として、モデルケースを作るということであり、東京都が費用負担するものです。
 今回は保育所、障害者施設など運営している5つの法人を対象にしていますが、特に保育所事業にあたっては、民間企業による保育ビジネスによる参入が顕著で、経営ノウハウを蓄積した民間企業と対等以上のサービスを提供することが、既存の社会福祉法人が運営する保育所にとって必要になってきます。また、東京都では、独自の認証保育所をスタートさせており、利用者の選択範囲は広がってきています。
 こうした背景のもと、この活動は、従来よりも一層洗練された保育サービスを提供できるように、東京都の社会福祉法人に対する支援の必要性から、それを具現化したものといえます。この経営コンサルタントによる活動は、本年度の東京都の事業として既に予算化されていたもので、その実行段階となります。具体的なコンサルタントの名前は公表されていませんが、契約しているのは2〜3社で、社会福祉法人特有のサービス形態に精通した事業者が選定されたとのことです。今回の経営コンサルタントによる改善策をモデルケースとして文書化する等し、東京都社会福祉協議会等を通じて、広く他の社会福祉法人にも適用させていこうというのが、都の青写真のようです。 このモデルケース作りは本年度単年のもので、来年度以降は予算化の計画はなく、今回策定するモデルケースを来年の8月位までには、公表できるような形にしていきたいとしています。東京都としての活動はここまでで、実際にこのモデルケースを活用するか否かは各法人の主体性に任せて、以降の事に関しては都は関与、ましてや指導等もしていかないということです。
 このように、来年のモデルケースの開示により、より良いサービス提供とそれを維持するための基盤作りを構築することに関して、社会福祉法人の意識も敏感になることは必至で、経営面でのサポートをする必要性が、益々大きくなると考えられます。

 認証保育所:東京都独自の保育制度で、駅前への設置・0歳児受け入れ・13時間の開所等を特徴とし、国の認可保育所よりも、設置基準を緩和させています。

※本文は、日本経済新聞朝刊(11月6日)の「首都圏経済」欄の記事を参照して、当会が、東京都福祉局総務部福祉改革推進課を訪問し、ヒアリングした内容です。


「介護施設や保育所、優劣を評価・公表」について
民間企業の保育ビジネスへの進出が顕著になってきました。進出企業は、教育出版会社、鉄道会社、育児用品会社・人材派遣会社など様々ですが、いずれも、資金力、経営ノウハウ等を持った大手企業です。主な企業の進出状況は下記のとおりです。
企業名
施設数 備考
ベネッセ
コーポレーション
9 神奈川県の6カ所、他に千葉・兵庫・福岡に各1ヶ所ずつ独自に「チャイルドケアセンター」を展開しています。また、東京都三鷹市から公設民営での認可保育所の運営を受託をしています。
小田急商事
2 東京都狛江市と神奈川県相模原市に保育所を開設しています。いずれも、駅周辺に立地しています。このうち狛江市の保育所は、東京都の認証保育所としての適用を受けています。
京急サービス 2 神奈川県横浜市内の駅周辺に保育所を設置しました。
コンビチャチャ 1 育児用品メーカー子会社のコンビチャチャが運営し、 11月1日に東京都中野区に開設しました。
ビジョン 4 育児用品メーカーのブランドを生かし、保育・託児施設を千葉・大阪・滋賀・茨城に展開しています。他に独自の幼児教育プログラムによるケアセンターを首都圏を中心に運営しています。
パソナフォスター
4 直営の施設4ヶ所を首都圏で運営しています。他に企業内保育を実施しています。