訪問介護の報酬区分の見直し

 厚生労働省は、介護保険から訪問介護サービスに支払う介護報酬について、2003年度見直し案をまとめました。現行制度の訪問介護サービスの内容については下記表のとおりですが、これを報酬区分に応じて「身体介護」・「家事援助」・「複合型」とに区分されています。今回の厚生労働省の見直し案は、この区分を「身体介護」と「生活支援」の2区分に簡素化するというものです。また、区分による報酬の格差も縮小する方針です。   
 もともと「複合型」については、訪問介護が多くの場合身体援助と家事援助が混在していることが多く、区別するのが難しい上、利用者側にとっても基準があいまいで利用しにくいとの批判がありました。この見直し案によって「複合型」を廃止し、利用者・事業者ともに分かりやすい区分となります。   
  訪問介護事業については、介護保険スタート時から民間業者が参入してきましたが、その多くが経営的に苦しく赤字に陥っているのが現状です。経営的に安定しない理由としては、単価の低い「家事援助」サービスが、「身体介護」と比べて利用率の差がさほどないことが主要因となっています。ちなみに、利用割合は、「身体介護」が39.8%、「家事援助」が35.3%、「複合型」が24.9%となっています。こうした実情から事業者側では介護報酬、特に「家事援助」サービスの報酬引き上げを望んでいたという背景がありました。   
 今回の見直し案は、事業者側の経営面でのこうした事情を考慮し、報酬区分並びに報酬格差を縮小したものといえます。厚生労働省では縮小幅を来年1月までに決定する予定とのことです。また報酬格差の是正により、報酬額の1割を負担する利用者にとっても、その負担額が平準化し、サービスを選択しやすくなることが考えられます。   
 介護保険の趣旨である「在宅」による介護が、こうした見直し案によって、より普及していくことが期待できるといえます。

<介護保険法上での訪問介護の種類>

サービスの種類 サービスの内容の定義
訪問介護
(ホームヘルプサービス)
ホームヘルパーが居宅で行なう入浴・排泄・食事等の介護その他の日常生活上の世話。
訪問入浴介護
居宅を訪問し浴槽を提供して(浴槽搭載の入浴車等を使って)行なわれる入浴の介護。
 
<訪問介護の報酬区分見直しのイメージ>

(日本経済新聞5月12日より)








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