〜福祉事業民営化の現況〜

  民間福祉施設の充実や自治体の財政難などの影響もあり、公立福祉施設の経営を民間に移譲する動きが活発化しています。昨今の各自治体の財政状況、また福祉サービスのあり方が行政主導から利用者主権による選択へと大きく変わりつつある時代の流れの中で、福祉施設の民営化の動きは今後ますます加速するものと思われます。

>>>年々増加する民間施設の割合>>>
 厚生労働省の調査によれば、H12年10月時点での全国の社会福祉施設等の総数は75,875施設で、前年に比べ10.2%増加し、特に老人福祉施設は31.3%もの伸びを示しています。総数に占める民間の割合も年々増加し、民間施設は47.3%となっています。老人福祉施設(28,643施設)に限れば、民間施設の割合は69.7%に達しています。 (日本経済新聞7月19日付朝刊・厚労省「平成12年社会福祉施設等調査の概況」より)

>>>自治体の動き>>>
 東京都では前号でもお伝えしたように、福祉施設経営からの撤退などを盛り込んだ報告書が発表されました。都はこれに対し、今後の方針を現在早急に詰めている段階であるとのことです。また愛知県ではこの4月に特別養護老人ホーム(以下「特養」といいます)全11施設を社会福祉法人に移譲したほか、軽費老人ホーム1施設を今春廃止し、他の施設についても2008年度までに見直す方針とのことです。 大阪府は府社会福祉事業団を4月に民営化し、府立の特養6施設などを同事業団や他の民間法人に移譲しました。埼玉県でも特養1ヵ所を民営化したのに続き、残る5ヵ所の県立福祉施設も民営化する方針です。
 このほか、北海道東川町では町立の特養が社会福祉法人に、建物は無償譲渡、土地は無償貸与の形でこの4月に移譲され、また同旭川市も知的障害者更正施設と養護施設、母子生活支援施設の民営化を検討中です。(日本経済新聞7月19日付朝刊より)

 

 〜総合規制改革会議・『中間とりまとめ』発表〜

 政府の総合規制改革会議は、年末の第2次答申に向け、「中間とりまとめ」を発表しました。福祉分野にかかわる言及のうち、主なものは以下の通りです。

1.福祉分野における株式会社参入の促進【H14年度中に検討・措置】
1)特養経営への株式会社の新規参入
 不適切なサービス内容の防止、経営主体の自由な撤退など、懸念されるいくつかの課題については、前者に対しては外部による検査体制の確立、苦情処理機関の整備、情報公開の促進など、後者は他の特養による入所者の引受などのセーフティネットの確立によって対処が可能であるとして、特養の設置主体を自治体と社会福祉法人に限定している現行法(※)を改正し、その他の主体についても特養の設置を認めるべきであるとしています。(※ 社会福祉法第60条)
2)株式会社のケアハウス参入要件の緩和
 すでに株式会社の参入が認められているケアハウスについては、法人が都道府県知事等の許可を受ける際の基準のうち、@民間企業(株式会社等)に対する前期の利益基準(経常利益1億円以上)については、新たにケアハウス事業を目的として設立される法人の参入を妨げるものであるとして、これを撤廃すること A「株式会社の基準が3億円以上の『純資産』であるのに対して、社会福祉法人等は1億円以上の『資産(現預金、有価証券、不動産)』とされている資産基準についても見直しを行い、両者の不均衡を是正す」ること の2点を求めています。

2.教育・福祉分野における株式会社等への助成の取り扱い【H14年度中に検討・措置】
 「教育・福祉分野において株式会社等新規の事業者が参入する場合、学校法人や社会福祉法人同様の財政援助を行うべきである。」

3.情報公開の推進【H14年度中に措置】
「社会福祉法人については株式会社並みの公認会計士等による会計監査等の一層の普及を図るなど、情報公開のための基準の強化を図るべきである。さらに、社会福祉法人の公益性にかんがみ、収支決算書、事業報告書、監事の意見書等は、インターネット上での公開を促進すべきである。」

4.第三者評価の推進
 保育所について、「作成されたところ」である第三者評価に関するガイドラインの普及啓発に努めるとともに、第三者評価の取り組みを促進する仕組みを整備すべきである(【H14年度中に措置】)などとしています。