国家公務員の月例給、初の引き下げ〜人事院勧告〜

  人事院は8月8日、今年度の国家公務員給与の改定について、国会および内閣に勧告しました。以下、その内容についてお伝えします。

|||||官民給与の「逆較差」|||||
 勧告にあたって人事院が行った全国7,886民間事業所(企業規模100人以上、かつ事業所規模50人以上)、約40万人の個人別給与に対する実地調査では、一般の従業員についてベースアップと定期昇給を両方とも実施した事業所は全体の98%にとどまり(昨年29.7%)、ベアは実施したが定昇と区分できない事業所や定昇を中止した事業所、 定昇は実施したがベアは中止した事業所が68.1%、ベアも定昇もない事業所は19.6%(同7.9%)にのぼるなど厳しい経済・雇用情勢の中、公務員の月例給が民間のそれを2,770円上回っていることが明らかになっています。

|||||勧告の主な内容|||||
 こうした状況を受け、勧告では基本給(俸給表)の改定および配偶者扶養手当の引下げ等によって、月例給を民間の水準に準拠させるよう求めています。 月例給の引き下げに踏み切るのは1948年に人勧制度が発足して以来初めてのことです。また、期末・勤勉手当は4年連続のダウンで年間4.65ヵ月(0.05%減)とするほか、「民間ボーナスの年間支給回数の実態を踏まえ(人事院『給与勧告についての説明』)」て、来年度からはこれまでの年3回から6・12月の2回に変更するとしています。
 勧告が完全実施された場合、職員(行政職)の平均年間給与は約150,000円(2.3%)減の6,274,000円となり、年間給与は4年連続で減少することとなりました。

|||||社会福祉法人への影響|||||
 すでにご承知のことと思われますが、たとえば保育所の収入の中核をなすのは「保育単価」に基づいて支弁される運営費収入であり、 その「保育単価」の大部分を占める職員の人件費を積算する根拠として、主に人事院勧告の中の「福祉職俸給表」が用いられています。 勧告では、行政職以外の俸給表についても「行政職との均衡を基本に引下げ(骨子より)」としています。
 今回の場合、これまでのような期末・勤勉手当のみのカットにとどまらず、俸給表そのものも引き下げ改定されるのですから、収入の減少幅もこれまで以上のものとなることが予想されます。

 〜内閣府が介護報酬の見直しを提言〜

 内閣府は7日、「介護サービス価格に関する研究会(座長・西村周三京大大学院教授)」の提言として、介護報酬単価の見直しなどを求めた報告書をまとめました。
●採算価格からみた現行の介護報酬単価の評価
 在宅サービスについて、事業者のサービスごとの採算価格を調査した結果、身体介護サービス(介護報酬単価=4,020円)についてはほぼ採算価格と一致しています(4,030円)が、 家事援助(介護報酬単価=1,530円)は採算価格の平均(2,700円)を大幅に下回っており、このことが家事援助への需要の過度の増加と、家事援助サービスの 供給インセンティブの低下を招いているとして、改善(家事援助と身体介護の相対価格差の縮小)を求めています。 さらに、「複合型のサービスを廃止し、家事援助サービスの報酬単価を引き上げるとともに、収益の高い介護老人福祉施設の報酬単価を引き下げる、 あるいは家事援助サービスを介護保険の対象から除いてしまうのも一つの考え方でしょう」としています。家事援助の単価については厚労省でも来年4月の価格改定で引き上げる方針を打ち出しています。