〜『待機児童ゼロ作戦』の現況〜

 9月20日、厚労省は今年4月1日現在の保育所施設数や利用児童数、待機児童数などをまとめた『保育所の状況(平成14年4月1日)等について』を発表しました。 これによると、施設数(前年比58施設・0.3%増)・定員数(同20,745人・1.1%増)とも増加してはいるものの、 これらの増加率を待機児童数の増加率(4,246人・20%増)が上回る結果となっています。
 また、待機児童数のうち77.5%(19,709人)が首都圏(東京・神奈川・埼玉)と近畿圏(大阪・兵庫)に集中していますが、 同資料にはこれら都市部の自治体による待機児童解消への努力も一部紹介されています。ほかにも、東京都大田区では 着工まで時間がある区有の再開発地区に区が期間限定(三年程度)の認可保育所を設置し、運営を企業に委託する計画が進められるなど、 独自の試みも行われつつあります。

保育所待機児童数
H14.4.1(A) H13.4.1(B) 差(A−B)
25,447 21,201 4,246(+20%)
市区町村別待機児童数
順位 市区町村 待機児童数
1 大阪市(大阪府) 1,337
2 横浜市(神奈川県) 1,140
3 神戸市(兵庫県) 1,076
4 川崎市(神奈川県) 705
5 東大阪市(大阪府) 631
6 名古屋市(愛知県) 618
7 仙台市(宮城県) 604
8 堺市(大阪府) 536
9 相模原市(神奈川県) 452
10 福岡市(福岡県) 433
地方自治体の状況(例)
【東大阪市】定員5,665人(+256人)
 ⇒ 少子化対策臨時特例交付金(以下、「交付金」という)等により、増改築による定員増5か所、保育所分園定員増3か所、 保育所の創設1か所による定員増及び定員の弾力化により受入枠の増を図る。
【大阪市】定員37,123人(+1,114人)
⇒ 交付金等により、保育所の創設8か所、増改築9か所及び駅前ビル等の賃貸建物を活用した保育所分園13か所の整備を行うとともに、 公立保育所の保育士配置基準の見直し(1歳児4:1→5:1、3歳児15:1→20:1)等による定員枠拡大を実施。
【横浜市】定員24,125人(+1,355人)
 ⇒ 平成17年度までの5年間に、認可保育所・横浜保育室(市独自の基準により助成する認可外保育施設)、幼稚園の預かり保育などで計5,300人の受け入れ増を図るほか、 民営を中心に、13年度中には13か所(うち2か所は公設民営)、14年度中には17か所(うち5か所は認可化移行促進事業による横浜保育室の認可化)創設を予定。
【堺市】定員9,791人(+555人)
 ⇒ 13年度は私立8園の創設による445人の定員増、及び増改築による定員増を図るとともに、夜間保育所1か所を創設。

(厚労省『保育所の状況(平成14年4月1日)等について』より)
 〜厚生労働省『少子化対策プラスワン』発表

 すでに各全国紙でも報じられておりますが、上記『保育所の状況等について』と同じ9月20日、坂口力厚生労働相は少子化対策の新プラン『少子化対策プラスワン』を小泉純一郎首相に報告しました。
 厚労省の報道発表資料によると、同プランではこれまでの『待機児童ゼロ作戦』に加え、@男性も含めた働き方の見直し  A地域における子育て支援 B社会保障における次世代支援 C子どもの社会性の向上や自立の促進 の4つの柱のもと、国、自治体、企業等の様々な主体に計画的・積極的な取り組みを求めています。「子育てと仕事の両立支援」の観点から、 特に保育に関する施策が中心となっていた従来の取り組みに加え、就労環境の整備や地域による子育て支援、さらに社会保障制度や教育制度なども含めて、 多岐にわたる内容となっています。同プランの推進に向けて、厚労省は「少子化対策推進本部」を設置し、 対策の基本的な枠組みや、特に「働き方の見直し」や「地域における子育て支援」を中心とする直ちに着手すべき課題について、 立法措置も視野に入れて検討を行い、年末までに結論を出す方針です。
|||||育児休暇取得に数値目標|||||
 同プランの中でも特に注目されているのが、育児休暇の取得率について初めて目標値を設定している点です。 具体的には男性10%・女性80%とし、厚労省は今後2〜3年内の目標達成を目指しています。ただし、現状での育児休暇取得率は、 99年度の調査では男性は0.42%、女性は56.4%にとどまっています。目標達成までには、特に男性の場合、 取得率を現状の約20倍にまで引き上げねばならず、代替要員の確保などが必要となる企業からは反発も予想されますが、 報道によると坂口厚労相は目標達成に向けた企業の条件整備の義務化も示唆しているとのことです。
|||||その他の主な取り組み|||||
 このほか、子どもの看護休暇制度(99年度8.0%)・子どもの小学校就学開始までの勤務時間短縮等の措置 (同7.0%)の普及率についても各25%に向上させる目標が明記されたほか、子育て期間中の残業時間の縮減、 子どもが生まれた際の父親の休暇取得(最低5日間)の促進など就労環境の整備、 特定保育事業(週2〜3日程度または午前か午後のみの保育サービスの利用)の創設など保育サービスの充実、地域における子育て支援や住宅確保支援、 公共機関・企業等での施設改善など生活環境の整備も謳われています。
 さらに、平成16年の次期年金制度改正における検討事項として、年金額計算における育児期間への配慮と、 年金資金を活用した若者に対する教育資金の貸付制度の検討の2点を明記し、社会保障制度の面からの取り組みも盛り込まれています。