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小泉内閣の「構造改革特区」構想に関連し、坂口力厚生労働相は10月10日までに、特別養護老人ホームの施設運営への株式会社参入を条件つきで
容認する方針を、鴻池祥肇防災・構造改革特区担当相に伝えました。
経営の安定性を保つため、公設民営方式、または民間資金を活用するPFI方式により、自治体が関与できるしくみのもとで施設運営を行うことを
参入の条件としているとのことです。
||||| 特別養護老人ホームとは |||||
老人福祉法に規定する老人福祉施設の一種で、概ね65歳以上の者で、身体上または精神上の著しい障害のために常時の介護を必要とし、かつ居宅において介護
を受けることが困難な者を入所させ、食事・入浴・排泄その他の生活上の世話や機能訓練、健康管理および療養上の世話を行う施設です
(老人福祉法第5条の3、同第11条第1項第2号・同20条の5)。
社会福祉法上、特別養護老人ホームは養護老人ホーム、軽費老人ホームとともに第一種社会福祉事業とされています(社会福祉法第2条第2項第3号)。
第一種社会福祉事業の場合、経営は国、自治体または社会福祉法人が行うものとされています(同第60条)。
特別養護老人ホームは、介護保険上では「介護老人福祉施設」として位置づけられ、厚労省の最新の統計(H13年10月現在)では、
介護老人福祉施設は全国に4,638施設を数えます。人員や設備および運営などに関する基準を満たし、
開設者が指定を申請した施設は都道府県知事の「指定」を受けます。介護老人福祉施設が提供するサービスを「介護福祉施設サービス」と呼びますが、
指定介護老人福祉施設が提供する介護福祉施設サービスは、施設介護サービス費の支給対象となります(介護保険法第7条第20〜21項、同48条、同86〜88条)。
||||| 公設民営方式・PFI方式とは |||||
公設民営方式とは、自治体が設立し、その管理運営を社会福祉事業団・社会福祉法人・学校法人・民間企業などに委託する方式で、
近年保育所等においてさかんに採用されているものです。自治体にとっては、運営にかかるコストを低減できるとともに、民間の
経営ノウハウを活かした効率的かつ柔軟な運営が可能になるというメリットがあります。
また、万が一運営主体が撤退または倒産しても、設置主体である自治体が施設と利用者の受け皿となりうるため、
利用者は継続してサービスを受けることが可能になります。
PFIは「Private Finance Initiative(プライベート・ファイナンス・イシニアティブ)」の略語で、公共施設等
の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法をいいます。BTO(Build-Transfer-Operate・
民間事業者が自ら資金調達を行い、公共施設等を建設[Build]した後、施設の所有権を公共に移転[Transfer]し、
施設の運営・管理[Operate]を民間事業者が事業終了時点まで行っていく)方式と、BOT(Build-Operate-Transfer・
民間事業者が自ら資金調達を行い、公共施設等を建設[Build]・所有し、事業期間にわたり維持管理・運営[Operate]を行った後、
事業終了時点で公共に施設の所有権を移転[Transfer]する)方式とがあり、やはり民間の資金や経営的・技術的能力の活用により、
国や自治体が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる利点があります。
||||| 今国会中の法案成立目指す |||||
厚労省はこれまで、特別養護老人ホームに入所する寝たきりや痴呆などの高齢者の保護を図る観点から、
株式会社には不採算の場合の撤退や倒産という懸念が残るとして参入を認めず、運営主体を自治体か社会福祉法人に限定してきました。
しかし、有料老人ホームや在宅サービス等については株式会社の参入が可能となっており、前述の安易な事業撤退や倒産の懸念に対して
も公設民営方式などによる自治体の関与によって対応できるとの判断から、方針を転換したものとされています。
この件につき本部事務局が厚労省に電話にて取材をしたところ、内容については具体化の作業に入ったところであり、
報道された以上のことは回答できる段階にないが、ケアハウス事業への株式会社参入の場合にはPFI方式によって行われており、
その導入時の枠組みは今回の特別養護老人ホームの場合にも参考とされるのではないか、との答えを得ました。
「構造改革特区」については、政府は各省庁から提出される規制緩和案を一括して盛り込み、「構造改革特区推進法案(仮称)」として、
この18日に召集される臨時国会に提出し、成立を目指す方針であるとのことです。
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