〜障害者政策「脱施設へ」 政府の「新障害者基本計画」原案〜

 政府は先頃まとめられた今後の障害者施策の基本方針を示す「新障害者基本計画(以下『同基本計画』という。)」の原案において、@障害者本人の意向を尊重し、入所(院)者の地域生活への移行を促進する A「障害者は施設」という認識を改めるため、保護者、関係者及び市民の地域福祉への理解を促進する B入所施設は、地域の実情を踏まえて、真に必要なものに限定する など、これまでの施設サービスのあり方を改める方針を示しました。障害者政策の「脱施設」化を打ち出したものとして注目が集まっています。同計画は12月中に閣議決定され、正式発表される見込みです。
 同基本計画は平成5年に策定された「障害者対策に関する新長期計画」(障害者福祉法において政府が定めなければならないとされている「障害者基本計画」に位置づけられます)に掲げられるリハビリテーション及びノーマライゼーションの理念を継承しつつ、 15年度からの10年間における障害者施策の基本的方向を定めるものです。同基本計画ではこのほか施設サービスに関して、小規模通所授産施設などの通所施設や分場の整備や施設の一層の小規模化・個室化を図ることなどとしています。
 多くの先進国で脱施設化が進む中、日本では現在約13万人が入所施設で生活しています(知的障害者の場合・下表参照)。この同基本計画原案より前、11月23日には宮城県福祉事業団が、同事業団が運営する知的障害者の入所施設「船形コロニー」について、入所者485人全員を22年までにグループホームなどでの地域生活に移行させるという「『施設解体』みやぎ宣言」を発表しています。今回の同計画を受け、今後「脱施設」の動きが広がっていくのか、注目されます。
 
(単位:人) 在宅知的障害者 施設入所知的障害者
総数 329,200 126,300
(厚労省「平成12年 知的障害児(者)基礎調査結果の概要」による)
 
 〜保育単価改正、引き下げへ〜

◆〜平成14年度保育単価改正の事務連絡発出される〜◆
 平成14年度の保育単価改正についての事務連絡が、11月25日付で発出されました。正式な通知は1月以降の見通しで、単価表には「(案)」と表記されていますが、今回の改正で重要な点は、すでに出されている14年度の人事院勧告を受け、単価が過去に例を見ないほど大きく減額されていることです。改正単価は4月に遡って適用されますが、今年度の場合、単価が下がっているため、収入が年度当初の予算よりも減少することになります(100名定員の場合、概ね50万〜150万円程度となることが予想されます)。

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◆〜介護報酬引き下げの方針まとまる〜◆
 坂口力厚労相の諮問機関である厚労省・社会保障審議会介護給付費分科会は、来年4月から改定される介護保険の介護報酬について、全体としてマイナス改定とする方針をまとめました。
 12月9日に行われた第17回分科会では、介護保険施行後の2年余の実績をふまえたサービス課題として、在宅サービスの利用者が増加する一方、施設入所を希望する者が依然として多い傾向をあげ、介護サービスや保険料負担の面で大きな地域格差がみられる点を指摘しています。さらに、第2期介護保険事業計画期間の介護サービスの増大とそれに伴う保険財政への影響や近年の賃金・物価の下落傾向、介護事業者の経営実態をふまえて、「介護報酬の全体の改定については」、「保険料の上昇幅をできる限り抑制する方向で、適正なものとする」として、介護報酬を全体として引き下げる考え方を示しています。今後年末にかけて、財務省との間で2〜3%(日本経済新聞による)を軸にマイナス幅の調整が進められる見通しです。
 同分科会ではこのほか、訪問介護サービスにおける「家事援助」を「生活援助」に改称するとともに、身体介護・家事援助・複合型の3類型から、複合型を廃止すること、8時間を越える通所サービスに対する延長加算、夜間介護体制の整備されたグループホームに対する夜間ケア加算の新設などを示しています。