「福祉サービスの質の向上と利用者の選択に資する」という理念のもと、かねてから整備が進められてきた福祉サービスの第三者評価制度が徐々に稼動しはじめています。すでにこの10月から、痴呆性高齢者グループホームについては、所轄の都道府県が選定した評価機関による外部評価を受けることが事業者に義務付けられています。保育所についても、評価の受審は任意ですが、平成15年から評価事業が本格的に始まります。利用者が施設やサービスを選択する際の判断基準として、第三者による公正かつ明確な評価は必要不可欠のものです。その意味で、制度の確実な普及と定着が望まれるところです。
以下、第三者評価制度についての簡単な解説と、すでに評価事業を開始している種別や自治体の例をまとめてみます。
◆福祉サービスにおける第三者評価事業とは◆
事業者の提供するサービスの質を当事者(事業者及び利用者)以外の公正・中立な第三者機関が、専門的かつ客観的な立場から評価する事業 のことであり、その目的は 個々の事業者が事業運営における具体的な問題点を把握し、サービスの質の向上に結びつけることとともに、利用者の適切なサービス選択に資するための情報となること であるとされています。
制度の背景として、社会福祉法第75条(社会福祉事業者の利用者に対する情報提供に係る努力義務)・同第78条(福祉サービス評価に係る努力義務)が挙げられます。 〜厚労省「福祉サービスにおける第三者評価事業に関する報告書」 (平成13年3月23日)による〜
◆行政監査との違い◆
行政監査は、法令が求める最低基準を満たしているかどうかを所轄庁が定期的に確認するものであるのに対し、第三者評価は、評価の受審とその後の改善努力によって、当該事業所が提供する福祉サービスをよりよいものへと誘導する、つまりサービスの質の向上を企図するものであるという点で、基本理念が根本的に異なります。
◆実施状況◆ 痴呆性高齢者グループホーム:平成14年10月1日より評価受審を義務化、平成16年度末までに必ず1回は受けることとし、以後は年1回受
審。事業者は各都道府県が選定した評価機関と契約を結び、評価を受ける。
保育所:厚労省の委託事業として、全国保育士養成協議会による評価事業が平成15年より実施(受審施設数・約80)。
<自治体における実施状況例>
宮城県:指定介護老人福祉施設を対象に、平成13年7月より実施
東京都:訪問介護・居宅介護支援・特別養護老人ホーム・老人保健施設・保育所・通所授産施設・知的障害者入所更生施設などを対象に、平成
12年度において試行事業を実施、平成15年度より本格実施
横浜市:痴呆性高齢者グループホームを対象に、平成14年1月〜3月に実施
神戸市:訪問介護・通所介護などを対象に、平成12年9月より実施
北九州市:介護保険サービス・介護老人福祉施設・訪問介護事業者を対象に、平成12・13年度に実施
〜厚労省「第三者評価事業の実施状況等についての総括表」による〜
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