〜厚労省・『全国厚生労働関係部局長会議』資料から〜

 1月21・22日の2日間にわたり、厚労省において全国厚生労働関係部局長会議が行われました。会議の出席者には資料が配布されますが、これは国の今後の厚生労働施策の基本的な方針・方向性、および平成15年度予算案の概要について、部局ごとにまとめられているものです。以下、福祉に関わる部局である「社会・援護局」「老健局」「雇用均等・児童家庭局」の資料から、重要と思われる項目をピックアップし、概略をお伝えします。

|||| 社会・援護局 |||||
 ◆(「重点事項」)社会福祉施設の整備及び運営について(福祉基盤課)◆(P17〜)
 〜社会福祉施設等施設整備費〜
   ・国庫補助基準単価の改定:公共工事コスト縮減の実績や建設単価の動向等を総合的に勘案し、平成15年度予算(案)から改
   定(平成14年度以前からの継続事業については、当該事業開始年度の基準単価を適用)。
   ・PFI−BTO方式(注)で整備する在宅関係施設の地方自治体による買取費用に対する補助:地方自治体がPFI制度を活用
   し、PFI事業者に貸与することを目的として居宅サービス提供施設の整備を行う場合の買取費用について、国庫補助の対象に追加す
   る。
      (従来の補助対象)           ( 追 加 さ れ る 補 助 対 象 )
        ケ ア ハ ウ ス   老人デイサービスセンター(居住部門を含む) 痴呆性高齢者グループホーム
                  老人短期入所施設 在宅複合型施設
     (注) PFI−BTO方式:民間事業者が自ら調達した資金によって公共施設等を建設した後、施設の所有権は公共に移転し、運営
        管理を事業者が行うという方式。
   ・構造改革特区においてPFI−BTO方式で整備する特別養護老人ホームの地方自治体による買取費用に対する補助:特区
   内の特別養護老人ホーム不足地域において、地方自治体がPFI制度を活用し、PFI事業者に貸与することを目的として特別養護老人
   ホームの整備を行う場合の買取費用について、国庫補助の対象とする。 など


||||| 社会・援護局 障害保健福祉部 |||||
 ◆ (「重点事項」)新障害者基本計画及び重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)について◆(P1〜)
   ・現行の障害者基本計画及び障害者プランが平成14年度に最終年度を迎えるのに伴い、平成15年度を初年度とする新障害者基
    本計画及びその重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)を昨年12月24日に策定。
◆ (「重点事項」)支援費制度施行準備等について◆(P21〜)
   ・厚生労働大臣が定める支援費及び利用者負担の基準の告示案は、今月予定している支援費制度担当課長会議(注)で
   示すこととしており、正式な告示は2月を目途に定める予定。

         (注)厚生労働省に確認したところ、1月28日(火)に行われるとのことです。
   ・支援費制度移行に伴う経営資金(いわゆるつなぎ資金)について
     指定身体障害者更生施設等及び指定居宅支援事業者等の当初の運営に係る経営資金(つなぎ資金)については、社会福祉・
    医療事業団において貸付事務の準備を行っているところ。
     なお、繰越金等を有する施設については、繰越金をつなぎ資金として使用できる旨をすでに事務連絡をもって通知したところである
    (注)ので、借入の協議等にあたってはこの点にも留意した適切な取扱いをお願いする。  など
         (注)「身体障害者更生施設等における繰越金等の取り扱いについて」(平成14年11月18日事務連絡)。
◆(「連絡事項」)障害福祉課◆(P55〜)
   ・ホームヘルプサービスの充実について
   ・身体障害者の地域生活の支援について
     身体障害者デイサービス事業における、@入浴サービス加算・給食サービス加算・送迎サービス加算の創設 A従来デイサービス事
    業の枠組みで行っていた訪問入浴サービスを、デイサービス事業とは別の単独事業として「訪問入浴サービス事業」とする などについ
    て、各市町村に対し周知願いたい。
     また、短期入所(ショートステイ)事業において、新たに送迎加算を設けることとしたので、各市町村への周知をお願いしたい。  など


||||| 雇用均等・児童家庭局 |||||
◆ (「重点事項」)少子化対策について◆(P1〜)
   ・「少子化対策プラスワン」(注1)への対応について
      昨年9月に「少子化対策プラスワン」を公表。年度内に政府として緊急に講ずべき当面の取り組み方針をまとめるほか、自治体や事業
     主において少子化対策へむけた行動計画を策定し、次世代育成支援を推進する「次世代育成支援対策推進法(仮称)」(注2)、ならびに
     地域における子育て支援強化等を図る児童福祉法の改正案を平成15年通常国会に提出予定。さらに、仕事と子育ての両立の推進に
     係る立法措置や児童手当制度の拡充など、さらなる対策を検討。 (注1は昨年10月4日号、注2は前号にてそれぞれ既報)
   ・待機児童ゼロ作戦の推進及び放課後児童の受け入れ体制整備について
     (ア)待機児童ゼロ作戦の推進
       平成15年度予算案において、@保育所受け入れ児童数の約5万人増 A特定保育事業の創設(後述「特別保育事業について」参
      照)を盛り込むなど
     (イ)放課後児童クラブの拡充
       平成15年度予算案において、@800か所(14年度10,800か所→15年度11,600か所)の増 A障害児の受け入れを促進するた
      めの補助加算の要件緩和
    など
◆(「連絡事項」)保育対策等について◆(P56〜)
   ・特別保育事業について
     特定保育事業の創設:パートタイム労働者の増大等に伴う保育需要の変化に対応するため、3歳未満児を対象に週2〜3日程
    度、または午前か午後のみ必要に応じて利用できる保育サービスを創設。パート就労者が、必要な日時について月極で継続的に利用
    できる仕組みとする。
     その他、送迎保育ステーション事業の拡充・家庭的保育事業(いわゆる保育ママ制度)の利用日数等について、週3〜4日利用、あ
    るいは1日6時間程度まで条件を緩和すること についても明記。
   ・保育所入所の円滑化の見直しについて
    (ア)保育の実施は定員の範囲内で行うとの原則であることについて、再度周知徹底を図る。
    (イ)現行通知(注)では、定員を超えて保育の実施を行っている状況が恒常的に亘る場合には定員の見直し等に積極的に取り組むこ
     ととしているが、「恒常的に亘る」の基準を明確化し、「過去の3年度間常に定員を超えており、各年度の年間平均在所率が120%
     以上の状態」であることを明示する。
       これにより、平成15年度において、定員の見直し等を実施していただくこととなるが、平成16年度以降の定員の見直し等に係る
     基準については、平成15年度の定員の見直し等の状況を踏まえ、再度検討を行う予定である。  など
      (注)「保育所への入所の円滑化について」(平成10年2月13日 児発第73号・児保第3号)。
 

||||| 老健局 |||||
◆(「重点事項」)介護報酬の見直しについて◆(P21〜)<抜粋>
   ・介護報酬:全体で2.3%のマイナス改定
     在宅サービス・在宅重視及び自立支援の観点から、居宅介護支援(ケアマネージャー)、訪問介護(ホームヘルパー)等を引き上げ
              ることとし、平均で0.1%の引き上げ。
     施設サービス・平均で4.0%の引き下げ。

   ・
介護報酬見直し案の概要(P22〜28)
     1 自立支援の観点に立った居宅介護支援(ケアマネジメント)の確立
      ・ケアマネージャーによる介護プラン作成:利用者の要介護度による評価の廃止
           要支援     650単位/月
           要介護1・2   720単位/月  → 850単位/月
           要介護3・4・5  840単位/月
       ・質の高い居宅介護支援の評価
         i)4以上の種類の居宅サービスを定めた居宅サービス計画(ケアプラン)作成の加算を導入。
           (新設) → 100単位/月
         ii)一定の要件を満たさない場合に所定単位数の70%を算定する仕組みを導入。
         iii)1単位の単価に係る地域差(訪問介護等と同様)を導入。
     2 自立支援を指向する在宅サービスの評価
       ・訪問介護の区分の体系的な見直し
        身体介護と家事援助が混在した複合型を廃止。また、「家事援助」を「生活援助」に改称。
           身体介護中心型30分未満      210単位 → 231単位
           家事援助中心型30分以上1時間未満 153単位 → 208単位
                 1時間以上      222単位 → 291単位
       ・いわゆる介護タクシーの適正化
        要介護1以上の者に対し、通院等のために乗車・降車の介助を行った場合に算定対象を限定、適正化を図る。
            通院等のための乗車・降車の介助(新設) → 100単位/回
       ・通所サービス
        6〜8時間の利用時間を超えるサービスや入浴サービス等を評価するとともに、全体として適正化。
       ・リハビリテーション
        @訪問リハビリテーションの評価
          退所(退院)後6月以内の利用者に対して具体的なリハビリテーション計画に基づきADL(注)の自立性の向上を目的とした
         リハビリテーションを行った場合を評価。
           日常生活活動訓練加算(新設) → 50単位/日
      (注)日常生活動作(Activities of Daily Living・身の回りのことや家庭での日常生活、社会生活をする上での基本的な生活動
         作)。
        A通所リハビリテーションの評価
          身体障害や廃用症候群等の利用者に対して、個別リハビリテーション計画に基づき、理学療法士・作業療法士・言語聴覚
         士が個別にリハビリテーションを行った場合のリハビリテーションを評価。
           個別リハビリテーション加算(新設)
            退院・退所日から起算して1年以内の期間   130単位/日
            退院・退所日から起算して1年を超えた期間 100単位/日
        ・訪問看護
           緊急時訪問看護加算
            訪問看護ステーションの場合 1,370単位/月 → 540単位/月
            病院・診療所の場合      840単位/月 → 290単位/月
        ・痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)
          夜間の介護内容や介護体制を確保したグループホームにおける夜間のケアを評価。    
            夜間ケア加算 (新設) → 71単位/日 ※算定要件あり

     3 施設サービスの質の向上と適正化
       ・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
        入所者の自立的生活を保障する個室と、少人数の家庭的な雰囲気の中で生活できるスペースを備えた小模生活単位型特
       別養護老人ホーム(注・いわゆる新型特養)で行われるユニットケアを評価。
                           要介護1 784単位/日
          小規模生活単位型         要介護2 831単位/日
          介護福祉施設サービス費(新設)→ 要介護3 879単位/日
                           要介護4 927単位/日
                           要介護5 974単位/日
        これに伴い、居住費について自己負担を導入し、低所得者対策を講じた上で在宅との費用負担の均衡を図る。
         ※ 低所得者については居住費負担の軽減のため、保険料区分第1段階の場合66単位/日、保険料区分第2段階の場
          合33単位/日を加算。
        また、従来型の施設については、要介護度の高い者に配慮しつつ、全体として適正化。
          介護福祉施設サービス費(I)
           要介護1 796単位/日   要介護1 677単位/日
           要介護2 841単位/日   要介護2 748単位/日
           要介護3 885単位/日 → 要介護3 818単位/日
           要介護4 930単位/日   要介護4 889単位/日
           要介護5 974単位/日   要介護5 959単位/日
       ・介護老人保健施設(老人保健施設)
        日常生活動作等の維持・向上を重点とした個別的なリハビリテーション計画に基づくリハビリテーションを評価するとともに、全体
       として適正化。
           介護保健施設サービス費(I)
           要介護1  880単位/日   要介護1  819単位/日
           要介護2  930単位/日   要介護2  868単位/日
           要介護3  980単位/日 → 要介護3  921単位/日
           要介護4 1,030単位/日   要介護4  975単位/日
           要介護5 1,080単位/日   要介護5 1,028単位/日
           リハビリ機能強化加算 12単位/日 → 30単位/日
          (リハビリ体制加算の再編)
        また、老人保健施設が行う訪問リハビリテーションを評価。
        ・介護療養型医療施設(病院・診療所)の評価
           療養型介護療養施設サービス費
          (看護配置6:1/介護配置3:1) → 廃止
           療養型介護療養施設サービス費    療養型介護療養施設サービス費
          (看護配置6:1/介護配置4:1) (看護配置6:1/介護配置4:1)
           要介護1 1,126単位/日       要介護1  820単位/日
           要介護2 1,170単位/日       要介護2  930単位/日
           要介護3 1,213単位/日   →    要介護3 1,168単位/日
           要介議4 1,256単位/日       要介護4 1,269単位/日
           要介護5 1,299単位/日       要介護5 1,360単位/日
◆(その他「重点事項」から)◆
 ・痴呆性高齢者グループホームの外部評価について
   痴呆性高齢者グループホームについては、昨年10月より外部評価受審を義務づけ。高齢者痴呆介護研究・研修センター(注)では、
  昨年12月末までに44道府県・56施設に対して訪問調査を終えたところ。今後3月までに同センターによる訪問調査実施の日程が決定
  している施設数は185.
      (注)希望する都道府県から評価の委託を受ける機関で、運営主体は社会福祉法人。
 ・構造改革特区における特別養護老人ホームの取扱いについて
   構造改革特別区域法(昨年12月11日成立)において定められた老人福祉法(特別養護老人ホームの経営主体を地方公共団体ま
  たは社会福祉法人に限定)の特例は次のとおり。
    a 地方公共団体は、特別養護老人ホーム不足区域を含む区域について、内閣総理大臣から構造改革特区として認定を受けることが
     できる。
    b 当該構造改革特区内の特別養護老人ホーム不足区域においては、PFIまたは公設民営の2つの方式により、特別養護老人ホーム
     の株式会社等の参入が認められる。