痴呆性高齢者グループホーム第三者評価の現況

  本紙昨年12月20日号でも報じましたが、痴呆性高齢者グループホーム(以下「GH」という。)に対し、昨年10月からサービスに対する外部評価(いわゆる第三者評価)が義務づけられ、このほど社会福祉・医療事業団のホームページ「WAM NET」上で評価結果の公表が始まりました。現時点で、長崎市(2件)、さいたま市、大阪市、愛知県稲沢市、兵庫県姫路市など10件が公表されています(2月19日現在)。評価は平成16年度末までにすべてのGHが1回は受けるものとされ、それ以降は年1回の受審が義務づけられています。結果は「運営理念」「生活空間づくり」「ケアサービス」「運営体制」の4分類71項目についての評価のほか、特記事項として要改善点やそのGHの長所・独自性に関する記述が公表されます。
 昨年末の時点で全国に約2,500ヵ所を数え、今後も整備が進められてゆく(平成16年度末までに3,200ヵ所:厚労省計画)GHにおいて、客観的な評価によってサービス品質の向上を促進し、同時に利用者の選択の利便を図る第三者評価は、今後ますますその重要性が高まるものと思われます。

◆ 評価事業の流れ

@ 評価受審を希望する事業所は、管轄の都道府県から選定(※1)を受けた評価機関(※2)の中から選択し、申し込みます。
A 申込を受けた評価機関は、その事業所と契約を結び、評価を行います。
B 評価決定後、評価機関は結果を事業所に通知するとともに、WAM NET上で公開します。一方、事業者は受け取った結果を施設内の見やすい場所に掲示するほか、入居者の家族や利用申込者などに説明・送付を行います。
(※1)都道府県による選定:評価機関は、評価を実施しようとする各都道府県に対し、選定の申請をします。申請を受けた各都道府県は、その
   機関が必要な要件を満たしているかどうかを審査し、選定の可否を決定します。
    ただし、平成16年度末までの間は、適当な評価機関の選定が困難な都道府県や、選定した機関だけでは管内の全てのGHに対する評
   価ができない都道府県は、「高齢者痴呆介護研究・研修東京センター(都道府県・政令市および高齢者福祉関連機関の要請を受けて、
   痴呆介護実務者等に対する研修事業を行う機関・運営主体は社会福祉法人)」に評価を委託できることとされています。
(※2)評価機関:法人であること、評価を適切に行う能力を有する評価調査員を必要数確保していることなどの要件があります。

◆ 実施状況
 上記の高齢者痴呆介護研究・研修センターによる評価事業は、昨年末までに全国56の施設に対して訪問調査を終了し、今年3月までに全国185施設での調査実施が予定されています(予定数は昨年末時点・今年1月22日の厚労省部局長会議資料による)。
 このほか、東京都・岡山県・熊本県ではすでに独自の評価事業が始まっています。都道府県が実際に上記※1の「選定」を行ったケースとして、たとえば東京都の場合、GHを含め、特別養護老人ホーム・保育所など各種福祉サービスに対する評価機関を一括して審査・認証する制度(東京都福祉サービス評価推進機構)が設けられ、昨年末までに52法人が認証を受けました。東京都においては、この認証取得がGH第三者評価制度における「選定」に該当します。


◆ 痴呆性高齢者グループホームとは ◆
 もともと1980年代にスウェーデンで始まった形態で、ユニット(共同生活住居・5〜9人を1単位とする)単位の介護が大規模施設には難しいきめ細やかなサービスを可能にしているほか、食事の支度や掃除、洗濯などをスタッフが利用者とともに行うなどの家庭的な共同生活が利用者にもたらす恩恵は少なくないとされます。
  概 要 介護保険法上の位置づけ 特 長

痴呆性高齢者
グループホーム

5〜9人という少人数の痴呆性老人が、 スタッフとの共同生活を営みながら自立的な生活をするための住居

居宅サービス
(痴呆対応型共同生活介護・
介護保険法第7条5項
および15項)

一日中家庭的で落ち着いた雰囲気の中で過ごすことによって、利用者の心身状態を穏やかに保ち、行動障害を軽減させたり、痴呆症状の進行を緩和したりするなどの効果が期待できるとされる。


|||||||||| T O P I C S ||||||||||
◆ グループホームの運営基準改定 〜サービス品質の維持・向上めざし〜 ◆
 各紙の報道によると、厚労省は @GH1施設につき最低1人のケアマネージャー配置を義務づける(来年4月以降の実施で、当初の2年間は経過期間とし、平成18年4月から完全義務化) A同じ敷地内に設置できるユニット(共同生活住居)の上限を3ユニットから2ユニットに減らす(今年4月より) など、運営基準を変更する方針を固めたとのことです。
 安定したニーズがあり、しかも定員が最大で27人(現行の場合)と小規模のため設置コストが抑えられることなどを背景に、GH事業には社会福祉法人だけでなく医療法人・有限会社・株式会社・NPOなど多彩な主体が参入してきました。その結果、施設数は介護保険制度開始前の10倍以上に急増していますが、一方で効率重視の経営によるサービス品質の低下などの懸念もささやかれており、今回の変更はこうした問題に対処するためのものとみられています。