厚労省、すべての介護保険サービスに外部評価義務づけ

 7月28日日本経済新聞朝刊によると、厚生労働省は、居宅・施設合わせて16種類のすべての介護保険サービスにつ いて、事業者に外部の客観的な評価を受けることを義務づける方針を固めたもようです。利用者がより質の高いサービス を選びやすくすると同時に、事業者の競争を通じて劣悪な業者の淘汰を進め、介護保険給付費の抑制にもつなげたい考えであるとのことです。

||||| 年1回の評価受審を義務づけ ||||

 すでに痴呆性高齢者グループホームについては昨年10月より年1回(当初は経過措置として16年度末までに1回受審すれば可)の外部評価受審が義務づけられていますが、今回の方針はこれを各サービスに広げようというもので、すべての介護保険サービスに対し、外部の評価機関による外部評価を年1回受けるよう義務づけるものです。

||||| 各都道府県が評価機関を指定 |||||

 各都道府県は、評価能力を有すると認められる評価機関をNPOなど民間法人から指定し、評価機関は評価員を介護現場に派遣してサービスごとに介護方法や利用者の痴呆進行を抑える工夫の有無、苦情対応など数十項目について数段階で評価するとともに、利用者へのアンケート調査、事業者の自己評価を実施します。そしてそれらを総括した総合評価がインターネットなどで公開されます。これはすでに実施されている痴呆性高齢者グループホームに対する評価の制度()を踏襲するものであるといえます。

痴呆性高齢者グループホームの評価については、前述のように経過措置として16年度末までに1回、17年度以降は年1回以上の受審を
 義務づけています。また、ほとんどの道府県ではまだ評価機関や機関認証のシステムがないため、民間法人(高齢者痴呆介護研究・研修
 東京センター)に評価を委託しているのが現状です。

||||| 利用者の選択の利便とサービス向上を促す |||||

 介護保険制度導入と同時に直接契約制に移行した介護福祉サービスですが、サービスの質に関する情報の不足から、事業者の優劣を利用者が判断しづらい現状があります。外部評価の導入とその評価結果の公表によって、利用者は事業者のサービスの評価を事前に調べ、比較検討することが可能になります。また各事業者は評価に耐えうるサービス品質の確立が必須となり、より良質なサービスをめざした事業者間の競争促進が予想されます。さらにこれら一連の営為によって悪質業者の淘汰・排除が進み、介護保険給付費の無駄な支出を抑制し、財政悪化を防ぐ効果も期待されているとのことです。

||||| 来年度からモデル事業、数年内に全事業で開始 |||||

 報道では近く全国共通の評価基準を定める作業に着手し、来年度からモデル事業を始め、数年内に全事業を対象とするとされています。本件について厚労省に確認したところ、これから検討に入るところで一切は未定である、との回答でした。
 今回のような厚労省・各都道府県・各評価機関等の連携による一連の評価のシステムは、すでにその大枠が通知でも示されており(社援基発第0422001号・平成15年4月22日 厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長通知)、今後整備が進められるものと思われます。

(参考)介護サービス事業者数(2003年4月末延べ数・カッコ内は前年比伸び率%)[日本経済新聞7月28日付朝刊による]

居宅サービス 訪問介護(ホームヘルパー) 17,952(15.3) 居宅サービス

痴呆対応型共同生活介護
(グループホーム)

2,944(60.1)
訪問入浴介護 2,887(1.4) 特定施設入所者生活介護 511(33.7)
訪問看護 62,774(5.0) 居宅療養管理指導 141,566(3.3)
訪問リハビリテーション 49,440(6.6) 福祉用具貸与 6,902(15.7)
通所介護(デイサービス) 11,670(15.2) 居宅介護支援(ケアマネージャー) 25,290(7.2)
通所リハビリテーション 5,828(2.4) 施設サービス 介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
4,978(3.9)
短期入所生活介護 5,330(5.0) 介護老人保健施設 2,942(3.7)
短期入所療養介護 6,797(1.9) 介護療養型医療施設 3,992(1.7)
 

(参考)独自の福祉サービス第三者評価システムを実施または検討中の自治体(例)

自治体

現  況

東京都 都独自の基準により認証された評価機関による評価事業を今年度より本格施行、高齢者・障害者・児童全35サービスについて評価を実施。評価受審の施設には都が受審料金を補助
京都府 評価機関の公募と評価者の養成など、介護サービスを対象とした評価事業を今年度から試行実施
三重県 「みえ福祉第三者評価制度」として評価機関公募と評価者育成を行い、特養を対象に今年度より実施
岡山県 痴呆性高齢者グループホーム評価の評価機関認証制度、評価項目などを検討中、今年度開始をめざす