8月8日、平成15年度の人事院勧告が発表されました。この人事院勧告は1948年に開始され、毎年8月になると
発表される、国家公務員の俸給を決めるためのもので、勧告の中には当年度に適用される新しい俸給表(職種によって分かれています。)や、また前年度からの改正点などについて記述されています。俸給表の中でも「福祉職俸給表」は社会
福祉施設に支弁される措置費や運営費に積算されている人件費の根拠とされており、この人事院勧告の動向によって措置
費や運営費の額が変動します。また、社会福祉施設ではこの「福祉職俸給表」にしたがった給与額が設定されている例が多く、社会福祉施設の職員の給与額にも直接的に影響をもたらすものとして、注目されています。
||||| 今年度の給与勧告の骨子からの抜粋 |||||
○本年の給与勧告のポイント 〜平均年間給与は5年連続、かつ、過去最大の減少
(年収△16.3万円(月例給△1.1%と期末・勤勉手当△1.5%を合わせて△2.6%))
@官民給与の逆格差(△1.07%)を是正するため、2年連続で月例給の引下げ改定
――俸給月額の引下げ、配偶者に係る扶養手当の引下げ、自宅に係る住居手当の支給対象を限定
A期末・勤勉手当(ボーナス)の引下げ(△0.25ヶ月分)
B通勤手当の6箇月定期券等の価額による一括支給への変更、調整手当の異動保障の見直し
C本年4月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分を解消するため、4月の給与に較差率を乗じて得た額を基
本として、12月期の期末手当で調整
||||| 勧告の骨子に関する考察 |||||
@について
俸給表の減額改定は、昨年度勧告開始以来初めて行われましたが、本年度は昨年度に続き2年連続の減額改定となりました。昨年度はそれまで2年間維持してきた俸給表の減額についてやっと踏み切った形でしたが、本年度もそれにストップはかからなかったわけです。
Aについて
期末・勤勉手当の引下げは6年連続です(この間の推移は下表を参照)。また、従来支給されていた3月の期末手当は、今年度より廃止されます。
Bについて
6箇月定期の適用などは民間では従前から当然のように実施されていることであり、今ごろこのような指摘がされることに驚かれる方も多いことでしょう。
年 度 |
期末手当 |
勤勉手当 |
平成11年度 |
3.75年度 |
1.2ヵ月 |
平成12年度 |
3.6年度 |
1.15ヵ月 |
平成13年度 |
3.55ヵ月 |
1.15ヵ月 |
平成14年度 |
3.5ヵ月 |
1.15ヵ月 |
平成15年度 |
3.0ヵ月 |
1.4ヵ月 |
||||| 今後は措置費・運営費の改正単価に注目 |||||
前述のとおり、人事院勧告に示された俸給表は、社会福祉施設に支弁される措置費や運営費の単価を決める重要な要素です。しかもこの勧告の内容は平成15年4月に遡って適用されるため、この勧告を反映させた新しい単価も、4月分まで遡って適用されます。つまり、単価が下がるということは、これまでもらいすぎていた措置費や運営費を返還しなければならないことを意味しています。社会福祉法人に関与しておられる先生方は、仮にこれまで潤沢に資金が残されている施設であっても、返還が生じることを念頭においてご指導されるとよろしいかと存じます(介護保険事業や支援費事業は別です)。なお、新単価が発表された際には、できるだけ早い時期に補正予算を作成されることをお勧めいたします。
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