少子化対策・子育て支援をめぐる動きが活発化
 
 本紙でも何度かお伝えしている次世代育成支援対策推進法が、少子化社会対策基本法とともに先の通常国会で成立したところですが、同法に関連して、厚生労働省・文部科学省が具体的な整備を活発化させています。

||||| 幼稚園の預かり保育拡充 |||||
 文部科学省は、幼稚園を活用した新たな子育て支援事業を始めるべく、来年度予算の少子化対策枠)で要求する方針です。行うとされているのは「特定預かり保育事業」と「親と子の育ちの場推進事業」で、人件費など数十億円を総事業費として見込んでいるとのことです。
 「特定預かり保育事業」は、通常の時間外に園児を預かる「預かり保育」を行っている私立幼稚園を対象として、私学助成)の中の「経常費補助(私立学校を運営していくために必要な人件費や教材費等を補助するもの)」の一つである「預かり保育事業補助(私立幼稚園が預かり保育を実施している場合の補助)」の対象時間数を現行の4時間から6時間程度に増やし、預かり保育の拡充を促すものです。ちなみに、園児数の割合では公立幼稚園より私立幼稚園の方が圧倒的に上回っています(公立20.5%:私立79.1%・読売新聞による)。「親と子の育ちの場推進事業」は土・日曜日や夏休みなどに公・私立の幼稚園を開放し、父親の保育体験や地域の人々との交流、さまざまな体験活動などの実施を想定したもので、世代間交流を通じた幼児の社会性・人間性の伸長、父親や地域の人々の子育て参加の促進がねらいであるとのことです。
 これらは子育て環境の整備などを謳う両法の理念を具体化するものといえ、文科省は少子化対策の柱と位置づけているとのことです。(読売新聞8月18日付朝刊による)
少子化対策枠:厚労省が概算要求基準とは別に要求する予算枠で、昨年末の税制改革による配偶者特別控除廃止で生じた2,500億円を財源とするもの。児童手当拡充や不妊治療への助成などに充てられます。
私学助成:私立学校に対して国・地方公共団体が行う助成で、私立学校振興助成法などの法律に基づいて行われます。

||||| 企業・自治体の少子化対策行動計画指針 |||||
  厚生労働省は、次世代育成支援対策推進法が自治体と従業員300人以上の企業に対して義務づけている少子化対策のための行動計画策定について、このほど策定の際の指針をまとめ、22日付の官報で告示しました。
 このうち企業向けの指針の中では、これまで少子化対策の中心とされてきた保育サービスの充実に加え、父親の育児参加促進や育児休業制度の整備、産休後の原職・原職相当職復帰、事業所内託児施設整備や子育てサービス費用の援助といった仕事と子育ての両立支援、子育てに関する地域貢献活動などが盛り込まれており、育児休暇の取得率など具体的な目標項目も挙げられていますが、計画の内容とともに、具体的には各企業の裁量に委ねるとしています。
 自治体向けの指針では、地域における子育て支援から教育環境、住まいや道路など生活環境の整備などのほか、都道府県向けには不妊治療への経済的支援なども盛り込まれています。 (朝日新聞8月22日付朝刊による)

||||| 子育てしやすい「カリスマ自治体」育成 |||||
 さらに厚生労働省は、2004年度から、「日本で最も子育てしやすい街」をめざして総合的に子育て支援策に取り組む自治体を国が指定し、資金をバックアップするモデル事業を実施することを決めたとのことです。先の国会で成立した改正児童福祉法と次世代育成支援対策推進法を根拠に、その具体的運用と総合的な出産子育て環境改善策の推進をねらいとしたもので、同省は必要経費を来年度の予算案に計上する方針です。
 これまで、病児保育や夜間保育、放課後児童健全育成事業など、分野ごとの取り組みにおいては先進的な自治体がありましたが、今回の事業は保育や小児科救急、育児相談など、子どもにまつわる全分野において全国をリードする、総合的な意味での「子育て先進地」=“カリスマ自治体”を育成して国がお墨付きを与え、その波及効果によって全体の底上げをねらうものです。全分野を推進する意欲のある市町村を対象に、計画を精査して50ヵ所程度を指定先として選び、指定自治体には計画作成費や取り組みを全国に紹介するPR費の援助のほか、子育て支援センター建設など既存事業での国の補助金も優先的に配分するとのことです。(長崎新聞などによる)