2005年4月の介護保険制度改革(介護保険法では、施行後5年を目途として制度全般の見直しを図ることと定めています)に向けて、相次いで報告書や提言が公表され、注目を集めています。
◆ 厚生労働省 高齢者介護研究会 報告書「2015年の高齢者介護」
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厚生労働省老健局長の私的機関として設けられた「高齢者介護研究会(座長:堀田力さわやか福祉財団理事長)」は、この6月末に「2015年の高齢者介護」と題する報告書を発表しています。
同会は平成16年度末で終期となる「ゴールドプラン21」後の新たなプラン策定の方向性、中長期的な介護保険制度の課題や高齢者介護のあり方について討議し、今後10年程度を見据えた新たなビジョンをまとめることを目的として、今年3月に設置されたものです。報告書は、戦後のベビーブーム世代が65歳高齢期を迎える2015年までに実現すべきことを念頭において今後の高齢者福祉のあり方を描いた、とした上で、現状をふまえた高齢者福祉の課題を4点に集約
し、それぞれに対する具体的な方策を掲げています。
高齢者介護の課題 |
具体的方策(抜粋) |
(1)介護予防・リハビリテーションの充実 |
・要支援者、軽度の要介護者に対する保険給付を、より介護予防やリ ハビリを重視したものにする
・医療リハビリ・介護リハビリの相互連携・一体的提供 |
(2)生活の継続性を維持するための、新しい介護サービス体系 |
・小規模・多機能サービス拠点の整備
→デイサービス、ショートステイ、緊急時や夜間の訪問サービス、居 住など多様な介護サービスを「切れ目なく、適時適切に在宅に届 け」る拠点――即時対応を可能とすべく、利用者の生活圏域ごとに 整備
・自宅・施設以外の多様な「住まい方」の実現
→介護サービスを付帯した高齢者住宅の整備、特定施設(現行で は介護付き有料老人ホームとケアハウスのみ)の対象拡大
・サテライト方式(施設が借り上げた公民館・民家などに職員が出向き、 サ−ビスを提供する方式)などによる施設機能の地域展開、ユニットケ アの普及、介護保険3施設の機能再整理
・ケアマネジメントの適切な実施、医療機関・関連機関・地域住民等と の連携などによる、地域の資源を統合した包括的ケアの提供
・施設における利用者負担の見直し(在宅との均衡に配慮) |
(3)新しいケアモデルの確立(痴呆性
高齢者ケア) |
・今後の高齢者介護において、痴呆性高齢者に対応したケアを標準と して位置づける
→要介護高齢者の半数(施設入所者は8割)に痴呆の影響が認 められ、今後さらに多数を占めることが予想される現状に鑑み
・地域での早期発見・支援のしくみの確立 |
(4)サービスの質の確保と向上 |
・利用者の選択に資するための情報提供・評価手法の確立
・ケアの標準化や劣悪事業者排除のしくみの確立 |
◆ 福祉自治体ユニット「介護保険改革への提言」 ◆
「住民サイドの福祉行政をすすめる市町村長の会」として、全国169市町村が加盟する「福祉自治体ユニット」は、この7月末に「介護保険改革への提言」を発表しました。
提言は、被保険者の年齢制限撤廃(介護保険を「すべての住民の介護ニーズに対応する普遍的な制度」であるべきもの
とし、現行では40歳以上となっている被保険者の範囲について、年齢制限を撤廃し、若年層も含めたすべての住民を被保険者とすべく制度を改組することを求める)、障害者サービスの介護保険給付移行(まず財政システムの一元化によって被保険者の拡大と収入基盤の安定化を図り、保険給付の一元化については要介護高齢者と若年障害者の介護サービスニーズの違いに考慮し、一定の経過措置などを経て順次統合を進める。また、広範に存在する高齢者サービスに比べ、障害者サービスは地域に点在することが多いことに鑑み、高齢者サービス業者の積極的な障害者サービス参入を促す政策誘導
的な施策によって、障害者サービスの普遍的な提供を可能にする)、在宅・施設サービス二元論からの脱却(介護保険3施設を「介護サービスを内蔵した集合住宅」として捉え直し、特別養護老人ホームに限らず、施設全体について個室・ユニットケア方式を原則とした整備を進める。また3施設と他のサービス(グループホーム・特定施設など)との給付の不均衡を是正し、日常生活費と家賃については原則自己負担とすることで、両者のイコールフッティングと公平な競争を図る)、市町村の権限強化(保険者たる市町村に対し、サービス供給量を決める権限や、事業者に対する調査権限、さらには悪質業者の指定取り消しの権限を与え、保険者としての機能の強化を図る)ことなどを求めています。
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