介護サービスにおける「情報開示の標準化」

 すでにお知らせしているように、この5月7日に福祉サービス全般における第三者評価事業の指針が雇用均等・児童家庭局、社会・援護局、老健局3局の局長通知として発出されていますが、その中に、老健局においては、現在別途、利用者が介護サービス事業者を選択するに当たっての判断に資する適切な情報を開示するための制度的な枠組み等について検討を進めている、というくだりがあります。これが厚生労働省の老人保健健康増進等事業として(社団)シルバーサービス振興会に設置され、現在も検討が進められている「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究会」で、利用者の選択に資するために事業者が情報を開示する際の実施方法、評価基準等の標準化を目的としたものです。同会による中間報告書をもとに、現時点での概要をお知らせします。

『利用者による介護サービス(事業者)の適切な選択に資する情報開示の標準化について』

基本的な考え方 介護保険制度の基本理念を現実のサービス利用において保障するための環境を整備するもの。事業所の格付けやサービスの画一化を目的とするものではない。
事業所の情報開示項目 「基本情報項目」(事業所に関する基本的な事実情報・開示だけで足りる項目から構成)と「調査情報項目」 (大・中・小項目と小項目を判定するための判定基準で構成・小項目について、調査員が客観的判定材料から事実確認し、基準にしたがって判定する)の2項目。
実施方法 あらかじめ種別ごとに標準的に作成された「基本情報項目」「調査情報項目」に事業所が自ら記入。「基本情報項目」は事業所の記入内容をそのまま開示、「調査情報項目」は調査員による事実確認を経て、その結果を開示。調査の過程において、サービス内容改善のための指導や経営改善のための指導等を行わないことを明確にすることが必要。
実施体制 実施主体は都道府県単位に設置することが適当。調査員、地域、時期等の違いを超えて、調査の均質性を確保する。調査の頻度は年1回程度、訪問調査は、複数の調査員が概ね2日程度で行う。調査員は対象事業所と利害関係がなく、人格が適正で、介護保険制度・調査対象サービス・「情報開示の標準化」に関する知識等に関する研修を修了した者。
費用負担のあり方 先行している痴呆性高齢者グループホームの外部評価等の例を踏まえると、事業所の負担とすることが適当。同時に、介護保険制度との関係も含めて検討することが適当。費用の水準は事業所(特に小規模な事業所)の負担能力に留意すること。
人材の養成(15年度の調査研究にあたって) すべての事業所の調査を実施可能とする調査員数を、調査員の均質性の確保のため、共通のカリキュラムで養成。調査員は7サービス()すべての調査ができることとし、専門性や現場経験を有しない者も養成。
モデル事業では訪問介護・通所介護・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設など7サービスについて検討 

 前述のように老健局を含む3局共通の通知が発出されており、今後各都道府県において第三者評価制度を整備してゆくことが明示されています。しかし、報告書では既存の第三者評価について「事業所の自主性・任意性による受審が前提であり、比較検討可能な情報を得るには一定の限界がある」「意欲のある事業所ほど積極的に受審するといった偏りが生じる可能性がある」などとした上で、この「情報開示の標準化」を「新たな取り組み」として、第三者評価とは一線を画すものと位置づけています。実際に、調査員養成に関して「共通のカリキュラムで養成(第三者評価では厚労省の指針に基づいて各都道府県がカリキュラムを策定)」「専門性や現場経験を有しない者も養成(第三者評価では専門性・実務経験を有していることが前提)」など、第三者評価とは異なる考え方が示されています。厚労省老健局に照会したところ、第三者評価制度との整合性・両立性(第三者評価のうち高齢者分野についてはこの「情報開示の標準化」の検討結果もふまえて制度が構築される(=第三者評価との統合)のか、第三者評価を受審した上で、さらにこの「情報開示の標準化」のための調査も受審する必要が生じる(=第三者評価との二本立て)のか)について、システムの他の細部とともに今後検討してゆくが、事業者に過重な負担を強いることがないよう配慮する、との回答でした。厚労省では今後第1次・第2次のモデル事業を経て、18年度の介護保険制度見直しにおいて制度化する方針であるとのことです。

|||||||||| T O P I C S ||||||||||

◆ 〜 国家公務員の定期昇給廃止、実績による「査定昇給」へ・人事院方針 〜 ◆ 
 報道によると、人事院は、民間において進む給与制度改革の動きをふまえ、これまでの「普通昇給(定期昇給)」を廃止し、勤務実績を給与に反映させる「査定昇給」を導入する方針を固めた模様です。ある給与の号俸(ランク)の職員が一年以上を「良好な成績」で勤務すると号俸が一つ上がることとされていながらも、実際には年功給・年齢給的な要素が残り、懲戒処分や長期欠勤などの理由がないかぎり、横並びで毎年昇給するのが実態となっていたというこれまでの定期昇給制度から、実績が基準に達しない場合は昇給できないが、優秀な実績を収めた場合は大幅アップも可能、という能力・実績主義の制度に改めるもので、人事院は、今秋の臨時国会へ提出予定の国家公務員制度改革関連法案に盛り込まれる実績評価制度に基づき、年内に査定昇給の方法や具体的な基準をまとめ、18年度からの導入をめざすとのことです。(読売新聞7月9日付朝刊による)