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 ◇今回は、いま民間保育所でもっとも話題性の高い2つの問題の現状について解説します。一つは「民間保育所運営費の一般財源化問題」、そしてもう一つは「幼保一元化総合施設の設置」についてです。

◆ 民間保育所運営費の一般財源化について ◆
〜 保育関係者の危惧 〜
 保育所関係者の間でいまもっとも話題となっているのはこの「運営費の一般財源化」の話です。もともと保育所の運営費は国が保育単価を示すことで総額が決まり、その2分の1を国が、4分の1を都道府県が、そして残りの4分の1を市町村が負担する形で確保されてきました。これに対して一般財源化の話は、国から自治体に総額での財源移譲がなされ、自治体の判断や基準によって国から移譲された財源の運用が決められることになります。つまり、一般財源化されれば自治体によって保育の質に格差が生まれることになるわけです。これに先立ち、実は公立保育所については(全国約12,000箇所、運営費総額1,660億円)平成16年度からすでに一般財源化されていますが、公立の場合には移譲された財源は自治体に吸収されてしまうために、表面的にはあまり大きな変化はなかったように思われています。しかし、これが民間保育所に実施されれば影響は甚大なものが予想されます。現在のような国基準での最低基準や保育単価などの考え方が消滅し、これらがすべて自治体の裁量に任されることになるわけですから、地域格差は当然大きなものが予想されます。これらの動きに対し、各保育団体をはじめ関係者の間ではこの「民間保育所運営費の一般財源化」に対しては反対活動が活発化しています。


◆ 幼稚園・保育所の機能を共有した「総合施設」 ◆ 
〜 幼保一元化の大きな潮流 〜

 保育関係者の間のもう一つの大きな話題は、幼稚園と保育所の機能を共有した「総合施設」の設置問題です。本来幼稚園は学校教育法を根拠とした教育施設(文部化学省所管)であり、保育所は児童福祉法を根拠とした生活施設(厚生労働省所管)です。この2つの機能を持つ施設は、98年に国が指針を示して以来増加しており、今年5月現在で全国に295施設、昨年から79施設増加しています。しかし、同じ施設内にあっても制度上幼稚園と保育所は別物のため、これを一元化しようというのが大きな狙いとされています。今年7月、文部化学省幼児教育課長に厚生労働省から、厚生労働省保育課長に文部科学省からという初の課長級交流人事が行われたのもこのためです。そして8月、文部科学省の中央教育審議会と厚生労働省の社会保障審議会が「総合施設」に関する中間まとめを公表しました。この中では次のように提言されています。
 @親の就労の有無で区別しないこと
 A0歳から就学前までのすべての子どもが対象となること
 B職員は保育士資格と幼稚園教諭免許を両方持つことがのぞましいこと
 今後この「総合施設」がどのような制度上位置付けをもって運営されていくのか、またどのように保育の質を担保していくのか、さまざまな観点から注目を浴びていくことは必至です。